ストーリーボードの作り方・使い方

インタビュー: ミミ・チャオ (Mimi Chao)

イラストレーターのミミ・チャオさんが、ストーリーボードを活用してKickstarterキャンペーンを成功させた方法を紹介します。

ストーリーボードから完成作へ。ミミが自身のスタジオ「Mimochai」で初出版した絵本。作品の詳細はこちら


ミミ・チャオさんは、人々の心の奥底に響くマジカルな発想を持つ作家兼イラストレータです。本の制作やクライアント向けのイラストを制作する際、彼女はコンセプトを使って、ストーリーボードのレイアウトを作成しています。今回のインタビューでは、そのプロセスについて詳しく伺いました。- コンセプトチーム
 

まずはミミさんのお仕事や、情熱を傾けていることについて教えていただけますか?プロのクリエイターとしてどんなお仕事をされているのか、何が創造力に影響を与えているのかを教えてください。

私はダウンタウン・ロサンゼルスで活動する作家・イラストレーターです。人々の幸福感や思考力を高めるような物語や作品を、シンプルで陽気な作風で創り出すことに情熱を注いでいます。デザインやテクノロジー、哲学、自然などさまざまなものに興味をもっているので、そこから得るインスピレーションの多くが仕事に反映されています。

ここ最近は、自分のスタジオであるMimochaiの活動を広げることに専念しています。私たちは、ワクワク感や冒険心を育むような、ストーリー性豊な作品づくりに励んでいます。先日、初の絵本制作のためのKickstarterキャンペーンを無事成させたばかりです。『Let's Go Explore』という絵本なのですが、これは本当に楽しみにしています。サポーターの方々から、なんと目標金額の4倍近い資金をいただいたおかげで、アニメーションを使ったインタラクティブな絵本づくりを模索することが可能になりました。その他にも、フリーランスでクライアント向けに物語やキャラクターの創作、カスタムイラストの制作などのクリエイティブ業務を行なっています。

A Make Believe Reality』と名づけた作品向けに、自身の写真に絵を重ねる。

イラストレーションの道を選んだきっかけや理由は何ですか?

私が今日のキャリアに至るまで道のりは、少し変わっていると思います。 これを言うと皆さんにびっくりされますが、もともと弁護士だったんです。 昔からずっと絵を描くことが好きで、『カルビンとホッブス』や、ロアルド・ダール、『ナルニア国物語』、スタジオジブリなどの世界にどっぷり浸かって育ちました。でも、両親は私がアートの道に進むことには反対で、クリエイティブな分野で働く人も身近にいなかったので、自分の可能性について限られた視野しか持っていませんでした。目標となるロールモデルがいるかどうかで、人生が大きく左右されますね。特に子供時代はその影響が大きいとつくづく思います。

私のキャリアは法律の世界でスタートしました。大学で経済学を専攻してすぐロースクールに進み、大手法律事務所で4年間働きました。この法律事務所は、実は本命の就職先でした。ここで身につけた仕事に対する姿勢は、今でも大切にしているし役に立っていますよ。でも、世間で言うところの「成功」を手に入れても、私の心はまったく満たされませんでした。

結局考え抜いた末に、リスクをとって自分が打ち込める仕事探しをしようと決心しました。私の最初の「冒険」は、弁護士からデザイン会社のプロジェクトリーダーへの転身でした。

ここは本当にハードな職場でした。コーディングやグラフィックデザインについて短期間で多くを学び、デジタル時代のクリエイティブな可能性を実感しました。あの頃は、まだ自分がフリーランスのイラストレーターになれるとは思っていませんでした。でも夜になると、息抜きとして再び絵を描くようになりました。描いた絵をInstagramに投稿するようにもなりました。当時はまだ2013年で、インスタも今ほど飽和状態や広告主体ではなかったですね。私が投稿した絵は落書きレベルのものでしたが、共感してくれた人たちから、とても好意的な反響をいただきました。さらに驚いたことに、なんと絵の依頼が届くようになったんです!

弁護士からイラストレーター、そしてクリエイティブ制作の起業家へと、型破りなキャリアパスを経て天職に至る。

3年ほど前に、私は2度目の冒険を決意しました。これまでの貯金を元手に、半年間という期間を決めて、イラストの上達に専念し、フリーランスで自分がどこまでやっていけるか試すことにしたんです。半年の予定が1年になり、さらに月日が経ち、気がつけば、自分自身でも認めてこなかった夢を叶えつつありました。今では、ビジュアル的な世界を構築し、人々と物語を共有できることを心から楽しむ日々を送っています。本当に毎日感謝の気持ちでいっぱいです。

コンセプトで作成したストーリーボード(別名「ゲームプラン」)のプリントアウト
 

そもそも、ストーリーボードとは何なのでしょうか?どのように活用したり、制作過程に取り入れていたりしていますか?また、目標達成にどのように役立っていますか?

ストーリーボードとは: ストーリーボードは「絵コンテ」と呼ばれたりもしますが、基本的にはストーリ展開やユーザー体験の流れを、簡単なイラストで視覚化したものです。本や映像、ゲーム制作などで活用されていますね。私は絵を描くことや創造することが好きですが、計画や整理をすることも大好きなんです。私にとって、ストーリーボードはそのすべてを兼ね備えたものです。

ゲームプラン: 物語性のある作品制作では、ストーリーボードは重要なプロセスになります。これはゲームプラン、つまり「作戦」を練り上げてから訓練を始めるようなものです。伝えたいメッセージや感情を深掘りして、それをどうやって絵で表現するかをじっくり考え抜くことができます。全体像を考える段階で細部にとらわれすぎないように、ここで描く絵はあくまで大まかなラフ画にしておきます。

さまざまな活用方法: ストーリーボードのビジュアルや要素は、プロジェクトによっていろいろと変わります。よくある32ページ構成の絵本は、ストーリーボードの基本が分かる良い例ですね。短く凝縮された直線的な構成でありながら、ストーリー全体がきちんと伝わります。これが長編映画向けのストーリーボードなら、何千枚ものコマ割りが必要になるでしょう。アプリの操作シナリオ向けなら、画面の操作説明がたくさん盛り込まれるのではないでしょうか。

創作の本質に集中: ビジュアル制作の段階で全体像を見失わないためにも、しっかりとしたストーリーボードを作っておくことは重要です。私は色塗りや脚本の推敲を始めるときには、かならずストーリーボードを手元に置くようにしています。そうすることで、全体的なビジョンを俯瞰しつつ、編集の自由度を高めることができます。また、チームやクライアントと仕事をする際にも、ストーリーボードは認識を共有するために重要な役割を果たします。私は、ストーリーは作品にとって最も重要な要素だと考えています。どんなにビジュアルが美しくても、ストーリーが貧弱だと空虚な作品になってしまいます。逆にシンプルな線画でも、適切な順序で、適切なメッセージを伝えれば、強い感情を呼び起こすことができます。
 

ストーリーボードやイラストの作成には、どんなアナログツールやデジタルツールを使っていますか?それらのツールをどのようにワークフローに取り入れ、完成作品を創り上げるのに役立てているのかを教えてください。

1. アナログな紙と鉛筆でサムネイル作成: 通常は、最初に紙の上にとてもざっくりとしたラフ画を描くことから始めています。こうすると一番直感的に考えることができるんです。ここで描いた絵は、私にしか分からない走り書きのようなものです。ちなみに、PalominoのBlackwingとPrismacolorのCol-Eraseの青鉛筆を愛用しています。

2.プロクリエイトでスケッチの修正:  サムネイルが描けたら、デジタルツールに切り替えます。絵の修正や清書にはデジタルツールが最適ですからね。プロクリエイトは、サムネイルの細部を描写したり考えたりするのにとても便利です。とはいえ、1枚1枚の画像が別々のファイルとして作成されるので、全体像は把握しづらくなります。

コンセプトでクローズアップしたミミのストーリーボード。この作業段階では、コンセプトの無限大のキャンバスとベクター能力が
大活躍。

3. コンセプトでストーリーボード作成: コンセプトのキャンバスは無限大なので、スケッチを整理してストーリーボードを作成するときに愛用しています。プロクリエイトで描いたラフ画をもとに、シンプルな線画のパネルを作成する、という方法をよく使っています。コンセプトはベクター形式なので、パネルの移動や形状の編集、要素の配置を簡単に行うことができます。

4. Photoshopで最終仕上げ: ストーリーボードが形になったら、Adobe Photoshopで清書したイラストの色塗りをして、InDesignで印刷用のファイルを作成します。
 

ストーリーボードの作成プロセスを教えてください。

はい、それでは定型的な絵本の制作を例にして説明しますね。

1. ライティング    仮に私が絵本の文章を書いているとしたら、最初にアイデアを見つけて簡単なシナリオを書きだすのが通常のプロセスです。言葉やメッセージだけを考えることに集中して、他の人に文章を読んでもらい意見を聞きます。ここでの目標は、テーマがしっかりしたストーリーを作ることです。

2. サムネイル作成  基本的なシナリオができたら、物語の流れをストーリーボードで作成します。先ほどもお話ししたように、最初はとてもラフなサムネイルから始めて、頭の中にあるアイデアを視覚化させるようにしています。

3. 文章ではなく絵で語る  この段階では、伝えたい思いや感情をどのように表現するかを考えます。連続した絵では、一枚の絵画とは異なるやり方で伝えたいことを設計する必要があります。物語の鍵となる要素をどうやって登場させるか、場面の展開にどうやって躍動感を持たせるかなど、多くのことを決めていきます。

また、言葉とビジュアルでそれぞれ何を伝えるかを考えることも重要です。ときには分かりやすい内容を加えたり、パネルを追加したりする必要があることに気づく場合もあります。それ以上に嬉しいのは、「絵が表現しているので言葉は必要ない」という場面に気づくときです。絵本のユーモアやペーソスは、絵が文章とは違う何かを見せてくれるところにあります。ちょっとしたサプライズ的な仕掛けを隠しておくのも楽しいですね。

この見開きは前ページからの続きで、読者が足跡をたどると新しい考え方を発見できる仕掛けに。

アプリやゲーム、動画のストーリボードを作成する場合も、同じような思考プロセスになると思います。どのような切り口にするか、また自分のプラットフォームの構成や目的に合わせて、いかにユーザーが楽しめるようなストーリー展開にするかといったことを考えます。

4.スケッチと修正(共同作業ならレビューも)思い通りの場面が一発で描けることもたまにはあります。でもそうでないときは、いろんなアングルを試したり、さらに描き足したり、逆にシンプルしたりと、何度も描き直しを重ねます。ときには現場から一旦離れて、新鮮な気持ちで再び絵に向き合うことも必要です。全体像や構成を俯瞰しつつ、重要なディテールやターニングポイントを考えることが大切です。

特別支援学校の教師ジリアン・マーが初出版する絵本『In My World』を共同制作。円滑な共同作業のために、ここで紹介した
ストーリーボードの作成プロセスを使い、自閉症の少年の物語に命を吹き込んだ。写真提供Formwork Photography

5. ユーザー体験を考え抜くこれまでの説明でお気づきかもしれませんが、イラストレーションはデザイン性が重視されます。ストーリーボードの良いところは、物語の体験に大きな役割を果たす、本のページをめくる感覚を疑似体験できることです。

読み手が予想していなかったものを見せたり、言葉では語らないことを絵で見せたりして、いかにサプライズを与えるか?読み手を登場人物の心の中に引き込み、そこから遠景に引いて広い世界観を見せる---そんな不思議な感覚を、平らな紙の上でどうやって表現するか?こういった問いかけを突き詰めていきます。

完成した『Let’s Go Explore』のパネル

クライアントや共同制作者がいるときは、ストーリーボードの見開きをKeynoteのPDF文書にして、そこでページをめくって本のペースやリズムを実感してもらうようにしています。この方法は皆さんから好評ですね。

6.ここからやっと本格的な絵の制作 本番の絵を仕上げる前に、こんなにたくさんの下準備をするのは大変です。でも、事前にできるだけしっかりと基礎固めをしておくことは大切なことだと考えています。


 

写真提供: Formwork Photography

ミミ・チャオ (Mimi Chao):  ダウンタウン・ロサンゼルス (DTLA) を拠点に物語やイラスト制作を手掛けるスタジオ「Mimochai」の創設者兼クリエイティブディレクター。魅力的なキャラクターや作品の制作、およびクライアントの創作活動を支援する。仕事の合間に街歩きや自然散策、ビールを飲むことが楽しみ。

Website: Mimochai.com
Instagram: @mimizchao、@mimochai
Skillshare: skillshare.com/mimichao

特に記載のない限り、この記事に掲載されている写真や画像はすべてMimi Chao氏の提供によるものです。
 


インタビュー: Erica Christensen
翻訳: Wakana Nozaki



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